層間剥離とは、プリントを構成する複数の層が硬化した後、分離してしまい、プリントが失敗に終わる現象のことです。 層間剥離は、どのような種類の3Dプリンターを使っても発生する可能性がある現象ですが、その状態を引き起こす原因はまちまちで、プリントのプロセスによって一つ一つ異なります。

視覚症状
Formlabsのプリンターで出力したプリントで層間剥離が起きると、次のような症状が確認できるようになります:
- プリント中に硬化した層の上にできる新しい層が硬化した時に剥がれるか、下の層から分離する
- タンク内の液状の樹脂の中に、硬化した樹脂の破片が混じって浮いている
注:
プリントしたパーツがビルドプラットフォームに密着せずに離れてしまった時は、非付着性によるプリントの失敗について記載している記事をご参照ください。
よくある原因
層間剥離は、以下のいずれかの要因が一つ、または複数の組み合わせによって引き起こされる可能性があります:
- モデルの方向、レイアウト、および/またはサポートの問題
- 長時間中断したままのプリント
- 古くなってきた樹脂タンク
- ビルドプラットフォームの緩み
- 光学面の汚れ
トラブルシューティングの手順
トラブルシューティングを行うためには、まず問題の根本原因を突き止める必要があります。下記に示すトラブルシューティングの手順に従って、プリントが失敗に終わった理由として考えられる要因を一つずつ洗い出し、それぞれの問題点を解消していきます。プリントの失敗に繋がる可能性が最も高い要因から最も可能性の低い要因の順に根本原因を究明していきます。
ステップ 1: PreFormを使ってモデルを点検する
モデルの方向、レイアウトおよび/またはサポートに関係する問題については、PreFormに備わっている各種ツールを使って検討してください。
剥離プロセスでプリントしたパーツを引っ張ったり、横にスライドさせたりすると、その力によって層と層の間の分子結合が破壊され、密着するはずの各層が結果的に分離してしまう可能性があります。
- 面積の大きい層は、面積の小さい層よりも、樹脂タンクから引き離す力に対する抵抗力が強いです。一つの層と次の層の面積に著しい違いがある場合、面積が大きい方の層が小さい方の層から離れる可能性が高まります。それを防ぐには、PreFormでパーツの方向を変え、面積が最大の層と最小の層の差を減らすようにしてください。
- PreFormでパーツを見ると、はみ出た部分やサポートで十分に支えられていない部分がある場合、そこが赤く表示されますので、その部分をにサポートを追加し、十分に支えるようにしてください。なお、Formlabsのウェブサイトには、モデルのはみ出た部分やサポートで十分に支えられていない部分をPreFormでどのように見極め、そこにサポートを手動で追加するかを分かりやすく解説している特集ページがありますので、詳しくはそちらをご参照ください。
ステップ 2: プリントが途中で中断しているかどうかを確認する
プリントを中断している時間が長引くと、積層間の結合性が弱まります。
Form 2でプリントしている場合:
- プリントの中断を余儀なくするエラーが発生したことがタッチスクリーンに表示されている場合は、そのエラーを解決してください。
- プリントの中断を余儀なくするエラーが発生したら、すぐにテキストまたは電子メールによるアラート文が送られてくるようにDashboardの通知機能を有効しておいてください。
Form 1+でプリントしている場合:
- プリントを完成させるのに 200mLよりも多くの樹脂がまだ必要な場合は、プリントを途中で一旦止め、樹脂を補充し、プリントを再開させるまでの中断時間を毎回できるだけ短くするようにしてください。
ステップ 3: 樹脂タンクを点検する
樹脂タンクに不純物が残こっていたり、表面が曇っていたり、どこか損傷していたりすると、タンク内の樹脂に照射するレーザー光が拡散してしまい、その結果、樹脂が十分に硬化できなくなります。
- 仕上げ用キットの備品の一つであるスクレーパーと目の細かい櫛を使って、樹脂タンク内の残留物を点検します。タンク内の樹脂の中に、部分的に硬化した樹脂の塊やその他の不純物が混在していないかを、スクレーパーと目の細かい櫛を使って、確かめます。または、 樹脂を濾過します。
- 樹脂タンクのシリコン (PDMS) 層が曇っていないかを確かめます。 あまりにも曇ってしまっている場合は、新しいタンクに交換する時期に来ていることを意味します。
- 樹脂タンクの下にあるアクリル窓 に汚れ、埃および/または指紋が付いていないかを点検します。最高のプリント結果を得るためには、この窓を完璧に透明な状態で保つ必要があります。この部分のクリーニングは必ず、 Formlabsが推奨する用具と手順で 実施するようにしてください。.
アドバイス:
一つのプリントを終え、次のプリントに移るまでの間も樹脂タンクを絶えず清潔に保つことが、プリントの信頼性と成功率を高める秘訣です。ステップ 4: 光学面を点検する
プリンターの光学面に汚れ、埃や残留物が付着していると、タンク内の樹脂に照射するレーザー光が拡散したり、照度が弱まり、その結果、プリントが失敗に終わる原因になる恐れがあります。特に汚れが付きやすいのは、プリンターの光学面で露出している部分です。
Form 2では、樹脂タンクの下にあるミラーの鏡面を外部の汚染物質から守るために、タンクとミラーの間に取り付けられているガラスの光学窓が、光学窓がどのようなもので、プリンター内のどこにあるかなどの詳細については、 インタラクティブなForm 2 の3D用語集 をご参照ください。なお、 Form 1+では、樹脂タンクの下に大型のミラーがあります。
- Form 2の光学窓またはForm 1+の大型ミラーに汚れが付いていないかを点検します。
- 汚れが付いている場合は、Formlabsが推奨するクリーニング方法で、汚れを取り除いてください。お使いのプリンターがForm 2であるか Form 1+であるかに関わらず、光学面のクリーニングは必ず、Formlabsが推奨する方法に従って慎重に行なうようにしてください。
注意:
光学面のクリーニングは必ず、Formlabsが推奨する方法で正確に実施してください。このクリーニング作業を間違った方法で実施したり、不十分な状態で終わったりすると、プリンターを修理するために、Formlabsに本体を送り返さずを得なくなる可能性があります。ステップ5: ビルドプラットフォームを点検する
ビルドプラットフォームが緩んでいると、層間剥離が発生し、プリントが失敗に終わる恐れがあります。
- ビルドプラットフォームをしっかり持ちながら、前後方向に少し揺らしてみてください。
- カム・ハンドルをロックの位置に切り替えているにも関わらず、Form 2のビルドプラットフォームが固定せず、まだ回転させたり、動かしたりできる時は、Formlabsのサポートチームに連絡し、この問題を解決する方法をお尋ねください。
- クランプを解除していないにも関わらず、Form 1のビルドプラットフォームが固定せずに、まだ揺らせたり、キャリア・アームから取り外せたりする時は、Formlabsのサポートチームに連絡し、ビルドプラットフォームを硬く締める方法をお尋ねください。
Formlabsのサポートチームに連絡する
上記で説明したトラブルシューティングの手順に従ってプリントが失敗した原因を究明し、解決しようとしても、問題が解消されない時は、どうかご遠慮なくFormlabsのサポートチームに連絡してください。なお、サポートを要請する際、以下に挙げる情報をできるだけ詳しくお知らせください:
- 現状に至るまでに、どのようなトラブルシューティングを実施したか。(例:「PreFormのモデルの方向を変えてみた。樹脂タンクも点検したが、どこにも損傷や曇りや残留物が見当たらなかった。」)
- 使用した樹脂の種類とロット番号。 ロット番号は、樹脂カートリッジの裾の内側または樹脂ボトルに貼り付けられているラベルに記載されています。(例:樹脂の種類:ホワイト v2 、グレー v3 など;ロット番号:YYYYMMDD-## またはYYYY/#######形式)
- プリントのレイヤーの厚み (例:0.1mm、0.05mmまたは0.025mm)
- 該当するモデルの .form ファイル。もし見当たれば、サポート要請を送信する際に、モデルの .form ファイルも添付してください。
- 過去に何回パーツのプリントを試し、そのうち何回成功したか。 (例:「part2.formというファイルで3回プリントを試し、1回目と2回目は成功したが、3回目は失敗した。」)
- 診断ログを送る。